昨日の夜中に雪江代数を読みふけったせいか,寝覚めは最悪.午前中はほぼ何もできなかった.

 

恥ずかしながら雪江代数の2巻はちゃんと読んだことがない.それ以外の代数の教科書もちゃんとやったことがない.つまり幾何をやりたいとかいっていながら,加群の理論はほとんどまともに知らないということになる.由々しき事態だと(個人的には)考えているので,機会を見つけて勉強したいと考えていた.

 

昨日の夜中に読んでいた命題のひとつは次のようなものだ. Rを単項イデアル整域, Aを有限生成左 R加群とする.この時,自然数 rと単元 e_1, e_2, \cdots, e_nが存在して,次の条件を満たす.

  •  A \simeq R^r \oplus R/(e_1) \oplus \cdots \oplus R/(e_n)
  •  e_i \mid e_{i+1}
また,これらの単元は一意的に定まる.
 
もちろん R = \mathbb{Z}とすれば,有限生成アーベル群の基本定理だ.齋藤正彦「線型代数入門」におけるジョルダン標準形の存在証明は,暗にこの事実を用いている.昔セミナーでやってからだいぶ時間が経ってしまったが,もう一度読み直したら得るところがあるかもしれないと思って書き残した.兎にも角にも代数の基本知識が抜けているのはいただけない.
 
午後は輪講の発表をした.Church-Rosser性の定義を間違えていてつらかった*1.いろいろ埋めるべき行間が実はあるようなのだが,筆者が証明を後回しにするので後々の発表者がつらそうである.今日話題になった,Celine Algorithmの解の存在条件についての定理も,来週の輪講でやるところできちんと証明するようだ.有理函数体係数の多項式についての議論なのだから解く事自体は問題ないはずだ,と言うのはそのとおりな気がするが,割かれている紙数的にはそこまで単純でない気配を感じる.
 
ところでSageでCeline Algorithmは実装されている.

これを読んだ限りでは本当にsolveで解いているだけのような感じなので,何をどうやって正当性証明しているのか割と謎だ.腰を据えてやったほうが良いだろうか.

 
ところで,今日発表していた別の人が発表後に「自分が何を話してるのかよくわからなかった,日本語を話している自信がなかった」と言っていた.
私自身はもう「発表すること」自体には慣れてしまったが,学部1年で微積分のセミナーをやった時に同じような感覚に陥ったのをよく覚えている.
場数の問題もあるのでなんとも言えないが,セミナーにおいて要点を抑えて発表するためには,「本に書かれていることの仮定を落とすとどうなるか,より一般化した状況で考えられないか」というのを意識すると捗る.そういう意味で今日の私の発表はあんまりよくないなぁと反省している*2
ただ,上掲した一般化をするにはある程度の知識が必要な場合もあるので,そのあたりのバランスはむずかしい.
 
ところでBorel可測でないがLebesgue可測であるような集合があるらしい,というツイートを見かけたが,多分具体的に構成してどうこうというよりは理論の見通し的な意味があるのだと思う.測度の完備化がどういうふうに役立つのかは知らないが,Borel sigma fieldは測度に依存せず,位相空間に入っている位相構造のみで決定されるので,確率論のように測度を取り替えて話をする場合,Lebesgue可測集合で考えていると却って話がややこしくなるケースがありそうだ(Lebesgue可測集合は完備化されたLebesgue測度に関して定義される.もっと直截に言えばLebesgue可測集合は測度にべったり依存してしまい,測度の取り換えと極めて相性が悪い気がする.).
ただこのあたりはまだちゃんと理解できていない.少なくとも「うまくいかない」具体例を作るか,議論の破綻点を例示できるようにしたい.今後の課題である.
 
明日からしばらく旅行に出かけるので,ブログの更新は(たぶん)しない.

*1:ある「canonical form」の一意性が担保されていればCR性は成り立つといえる.そのcanonical formが人間にとってcanonicalかどうかは問うていない.

*2:もちろん,特に注意して検討するところがそこまで多くなかったという言い訳はできなくはないが.